なりふり構わなかった。近藤愛(31)とのペア結成から3年半。田畑の体重は60㌔から75㌔に増えた。理由はただ一つ。「妥協なくやりたい」。肉中心の食事を徹底し、間食ではおにぎりを詰め込んだ。
470級は、かじやメーンセールを操るスキッパーと、体全体を使って艇を左右に傾けてバランスを取るクルーの2人乗り。当然、クルーは体格の大きな選手が有利だ。「海外の選手と比べると私は身長が低い(166㌢)。体重を増やすしかない」。スキッパーからクルーに変わるというだけではなく、世界で戦える肉体を求めた。
「ロンドンに挑戦するのなら頂点に立ちたい」。2008年の北京五輪後、ともにパートナーが第一線を退いた田畑と近藤は同じ思いでいた。「パートナー、いないね」。顔を合わせるたび、そんな話をするようになった。「同じ気持ちで戦えるのは近藤さんしかいない」。気持ちを打ち明け、自らクルー転向を持ち掛けた。「メダルを狙うとなると覚悟がいる。ライバルとしてヨットに打ち込む姿勢を見てきて、彼女とだったらやれると思った」。近藤も快諾した。
08年末に沖縄で初めて同じ艇に乗り、手応えを感じ取った。神奈川に住む近藤との時間を確保するため、練習場所の神奈川・葉山マリーナ近くで1人暮らしを始めた。勤務していた第一経済大(現:日本経済大)も退職。10年間住み慣れた福岡の地を離れる大勝負に出た。
経験豊富な2人はたびたび意見をぶつけ合った。従来はスキッパーが海上での司令塔役を担っていたが、話し合いを重ね、新たなスタイルを模索した。近藤が風を読んで艇を速く走らせることに集中し、田畑が戦略を練ってリードする。役割を明確にしたことで、息も合うようになった。
昨年末の五輪テスト大会で優勝。現在の世界ランキングでは2位だ。競技人生を懸けた夢への航海。ゴールは目の前まで来ている。
【競技日程と展望】 会場はロンドンから約220㌔の英国南部にあるウェーマス沖。女子470級は8月2日(現地時間)から行われ、10日(同)がメダル決定レースとなる。近藤、田畑組は昨年の世界選手権で最終日までメダルを争って6位。五輪での同級のメダル獲得となると、1996年アトランタ大会銀の重由美子、木下アトリーシア組以来となる
(西日本新聞より転載)
ロンドン五輪での活躍が期待されますね。応援してます:)